制度概要
2019年4月に新設された特定技能の特定産業分野のひとつが宿泊業です。受入れ上限は向こう5年間で22,000人となっています。
現在のところ技能実習に宿泊業がないこと、海外での技能評価試験実施が予定されていないことから、留学生が技能評価試験を受験、特定技能に在留資格を変更して就職するパターンが中心になりそうです。
業務内容=フロント業務など
宿泊分野の特定技能外国人に従事させることのできる業務は、「宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務」です(「宿泊分野における特定技能の在留資格にかかる制度の運用に関する方針」より)。
「宿泊サービスの提供に係る業務」とありますので、フロント業務に限らず配膳・清掃なども担当してもらえます。
従前の「技術・人文知識・国際業務」という在留資格でも、外国人客の通訳という位置づけでフロント業務を担当させることはできました。しかし、荷物運搬などの周辺業務に従事する時間が長くなると「「技術・人文知識・国際業務」の仕事ではない」ということでビザが不許可になるということがありました。新資格ではこういった不便さが解消されているといえるでしょう。
受入可能期間=5年
特定技能1号の上陸許可基準に在留期間が通算で5年に達していないことがあげられています。つまり、他のホテル・旅館で勤務した期間も含めて5年間が受入可能な期間の上限となります。
特定技能2号では更新期間の上限がありませんので、問題がなければ何年でも働き続けることができます。しかし、宿泊分野では特定技能2号への移行を認める予定は(今のところ)ありません。5年後にはいなくなってしまうということを覚悟して採用するほかありません。
技能実習制度との関係
技能実習2号を良好に修了した者は技能評価試験・日本語能力試験免除で特定技能の在留資格が認められます。
しかし、現時点では宿泊は技能実習2号の対象職種になっていませんので、後述の試験合格者から採用することになります。
宿泊分野は、近い将来技能実習2号の対象職種になりそうです。しかし、「技能実習2号を良好に修了した者」が現れるのは3年以上先になります。
宿泊分野固有の条件
宿泊分野の在留資格認定審査においては、下記の条件が上乗せされています。
派遣は不可
直接雇用に限られるということです。派遣会社が特定技能外国人をまとめて雇用・訓練して旅館・ホテルの繁忙期だけ派遣する、ということが認められれば需要がありそうですが、現行法では認められません。
旅館業法の許可
旅館業法3条1項の許可を受けている必要があります。
風営法2条6項4号の施設は不可
いわゆるラブホテルでは就労させられません。
風営法2条3項の接待は不可
「接待」とはなんでしょうか?
警察庁の通達によりますと「特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為は接待に当たる。」(談笑、お酌等)とあります。
単に宴会場で配膳をするくらいなら大丈夫でしょうが、お客さんの隣に座ってお話をするのはダメです。
協議会に加入、必要な協力をすること
国土交通省が設置する協議会に加入する必要があります。初めて特定技能外国人を受け入れる場合は、受入後4か月以内に加入すれば大丈夫です。
「必要な協力」とは実態調査に回答することなどが想定されています。
ちなみに、会費は無料です。
国土交通省が行う調査・指導に対し必要な協力をすること
具体的内容は不詳です。
ただ、制度導入直前の説明会では外国人の都市部集中に対し気を配っているようでした。都市部偏在が進みそうな場合は「指導」で「自粛」を依頼するということをおっしゃっていました。特定技能制度を運営する上で問題が生じそうなときに、適宜協力を求められるということでしょう。
登録支援機関も協議会に加入
支援計画実行を登録支援機関に委託する場合、登録支援機関も協議会に加入することが告示で義務付けられています。協議会加入済みの登録支援機関を選ぶか、委託した登録支援機関に協議会に加入してもらう必要があります。
ニュース
8月28日に第1号の在留資格許可が認められたことが報道されています。4月の試験に合格したベトナム人だそうです。
試験情報
第1回試験が4月14日に実施されました。受験者391名に対し合格者は280名でした。
第2回試験は10月6日(日)に東京、大阪など国内8会場で実施されます。合格発表は11月1日の予定となっています。
国外試験としては初となる技能測定試験が、10月27日(日)にミャンマーのヤンゴンで実施されます。受験料は30000チャット、合格発表は11月15日です。