特定技能は人手不足解消手段として有望
特定技能1号の就労可能期間は通算5年となっています。特定技能2号の在留期間更新制限はありません。特定技能2号については家族帯同も可能です。
外国人建設就労者受入事業による就労(在留資格は特定活動)は2023年3月までの期限付き制度ですし、技能実習3号は2年だけの制度です。
これらと比較すると特定技能は、人手不足・後継者不足を解消する有効な手段となりえる仕組みだといえます。
ニュース
2019年7月30日付で、5企業に対し、建設特定技能受入計画の認定がされました。新制度施行後初となります。
建設通信新聞が詳しく報じています。
国交省/「建設特定技能受入計画」初認定/コンクリ圧送など5企業9人の計画
技能評価試験情報
2019年度中にベトナム、フィリピンで実施する予定となっています。詳細は未定です。
採用から就労までの流れ
特定技能外国人の採用から就労までの流れは、1.資格の取得(試験合格または技能実習2号を良好に修了)、2.国土交通大臣による特定技能外国人受入計画の審査・認定、3.出入国在留管理庁による入国審査・許可となります。
対象業務の確認
特定技能外国人が従事できる業務は以下の11職種に限定されています。技能実習の対象職種とはずれがありますので注意が必要です。
技能実習の対象となっている職種
- 型枠施工
- 左官
- コンクリート圧送
- 建設機械施工
- 屋根ふき
- 鉄筋施工
- 内装仕上げ、表装
技能実習の対象となっていない職種
- トンネル推進工
- 土工
- 電気通信
- 鉄筋継手
特定技能外国人に求められる資格
特定技能の在留資格が認められるためには、一定の技能と日本語能力を有していることが求められます。
技能については、建設分野特定技能評価試験または対象職種に関係する技能検定3級に合格することにより一定の水準に達していることを証明します。
日本語能力については、日本語能力試験のN4または国際交流基金が実施する日本語基礎テストに合格することにより一定の水準に達していることを証明します。
技能実習2号を良好に修了した外国人は上記試験が免除されます。したがって、技能実習2号移行対象職種であり、かつ、特定技能の対象技能となっている職種で技能実習2号を良好に修了した外国人については無試験で在留資格を特定技能に変更することが可能です。技能実習2号を修了し既に帰国した外国人を特定技能で呼び戻す場合にも試験は免除されます。
技能実習修了者であっても異なる技能実習と特定技能の職種が異なる場合は試験免除とはなりません。
また、「良好に修了」したといえるためには原則として技能実習2号修了時に技能検定試験に合格している必要があります。技能検定を受検せずに帰国してしまったり、受検しても不合格となった場合は別途「評価書」と呼ばれる書類を用意することにより「良好に修了」したことの証明とすることもできます。しかし、評価書は元の実習先、監理団体に出勤率や勤務態度を記載してもらうものです。作成協力が得られなかったり時間がかかったりするので技能検定合格者よりも準備に手間取るものと覚悟する必要があります。
求人・雇用契約を締結
上記の条件を満たす者と雇用契約を締結します。
雇用契約締結に先立ち、求人・面接の実施が必要となりますが、建設業は民間事業者による有料職業紹介事業の対象外となっています。将来的には建設技能人材機構(後述)が技能評価試験合格者をあっせんしてくれるようになる予定ですが、現状としては、無料職業紹介を利用するか、連絡のとれる元技能実習生や現に自社で技能実習を受けている外国人を採用することになります。
「特定技能受入計画」の認定を受ける
建設業者が特定技能外国人を受け入れるためには、特定技能受入計画を作成し、国土交通大臣の認定を受けなければなりません。
認定要件は以下の通りです。
一 認定申請者が次に掲げる要件をいずれも満たしていること
イ 建設業法第3条の許可を受けていること。
ロ 建設キャリアアップシステムに登録していること。
ハ 第10条の登録を受けた法人又は当該法人を構成する建設業者団体に所属し、同条第1号イに規定する行動規範を遵守すること。
ニ 建設特定技能受入計画の申請の日前5年以内又はその申請の日以後に、建設業法に基づく監督処分を受けていないこと。
ホ 職員の適切な処遇、適切な労働条件を提示した労働者の募集その他の国内人材確保の取組を行っていること。
二 一号特定技能外国人に対し、同等の技能を有する日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を安定的に支払い、技能習熟に応じて昇給を行うとともに、その旨を特定技能雇用契約に明記していること。
三 一号特定技能外国人に対し、特定技能雇用契約を締結するまでの間に、当該契約に係る重要事項について、様式第二により当該外国人が十分に理解することができる言語で説明していること。
四 一号特定技能外国人の受入れを開始し、若しくは終了したとき又は一号特定技能外国人が特定技能雇用契約に基づく活動を継続することが困難となったときは、国土交通大臣に報告を行うこと。
五 一号特定技能外国人を建設キャリアアップシステムに登録すること。
六 一号特定技能外国人が従事する建設工事において、申請者が下請負人である場合には、発注者から直接当該工事を請け負った建設業者の指導に従うこと。
七 一号特定技能外国人の総数と外国人建設就労者の総数の合計が常勤の職員(一号特定技能外国人、技能実習生及び外国人建設就労者を含まない。)の総数を超えないこと。
八 一号特定技能外国人に対し、受け入れた後において、国土交通大臣が指定する講習又は研修を受講させること。
認定受入計画の実施状況はこれが適正に履行されているかどうか、確認が行われることになっています。認定が取り消される場合もあります。
建設技能人材機構に加入する
建設分野独自の制度として「特定技能外国人受入事業実施法人」というものがあります。
特定技能外国人受入事業実施法人として2019年4月1日に一般社団法人建設技能人材機構(以下、機構と略します。)が発足しました。
機構は、行動規範の策定にはじまり、技能評価試験の実施、試験合格者の就職先紹介、入国後の講習・研修、適正就労のモニタリングなどの事業を実施します。
特定技能外国人受入企業は、機構の正会員である建設業者団体の会員となるか、機構の賛助会員となるかいずれかの方法で機構に加入することが義務付けられます。
特定技能外国人受入企業が単独で機構の賛助会員となる場合の年会費は24万円です。
また、特定技能外国人受入企業は、受入の態様に応じて受入負担金を機構に納めなければなりません。
受入の態様 | 受入負担金(受入一人についての月額) |
機構が教育訓練をした 試験合格者を受け入れる場合 |
25,000円 |
受入企業が教育訓練をした 試験合格者を受け入れる場合 |
15,000円 |
試験免除の外国人を受け入れる場合 | 12,500円 |
まとめ
建設分野の特定技能制度は、他の分野のルールに上乗せされる形で業界固有のルールが確立されています。採用から就労開始までの期間も他業界より時間がかかりますので、余裕をもった採用計画を立てる必要があります。
また、いわば「公式ガイドブック」として「建設分野の外国人材受入ガイドブック2019」という書籍が刊行されています。ご参考にどうぞ。