介護

特定技能の位置づけ

 外国人が介護業務に従事することのできる在留資格は4つあります。4つの在留資格の中で特定技能はどのような位置づけにあるのか確認します。

介護

 2017年に「介護」という在留資格が新設されました。有資格者が介護業務に従事することのできる在留資格です。

 いわば、プロのための在留資格です。介護の在留資格で日本に在留している外国人は2018年末で185人しかいません。

特定活動(EPA)

 インドネシア、フィリピン、ベトナムとの間で締結されたEPA(経済連携協定)に基づく在留資格です。

 それぞれの国との間の協定ごとに若干の違いがありますが、おおざっぱに言えば、一定の学歴を持ち訓練を母国で受けた外国人が、日本で3年間介護業務に従事しつつ国家試験合格をめざす在留資格です。

 国家試験に合格すればそのまま就労継続可能ですが、不合格になってしまうと帰国(再来日して受験することは可)という厳しい面がありましたが、このたび不合格者は特定技能の在留資格で介護の仕事を続けることも認められることとなりました。

 受入規模は年間数百名です。

技能実習

 2018年11月に技能実習2号移行対象職種に介護が追加になりました。つまり、介護職の技能実習を最長で5年間受けることができるようになったということです。

 ただ、技能実習法第3条第2項に「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてなならない」とありますし、厚労省作成の「技能実習「介護」における固有要件について」という資料にも「外国人材の受入れは、介護人材の確保を目的とするのではなく、技能移転という制度趣旨に沿って対応。」とあります。介護業界の人手不足解消手段として技能実習制度を利用することはできません。

 なお、介護職の技能実習生になるための要件として日本語能力試験N4相当の日本語能力があることがあげられています。これは他の分野にはない「上乗せ要件」です。

 技能実習生を受け入れる側の制約として、開所3年以内の施設は介護の技能実習生を受け入れられないというものがあります。また、受入後6か月間は人員配置基準に実習生を含めることはできません

 さらに、受入人数も100人以下の事業所では実習生を年間6人までしか受け入れられません。これに対して特定技能では日本人職員の数を超えなければよいとされていますので技能実習の方が不利です。

特定技能

 介護以外の特定産業分野と比べて特に厳しい要件は課されていません。

 技能評価試験と日本語能力試験に合格すれば資格ありということになります。

まとめ

 来日の難しさという点では、介護>EPA>技能実習≒特定技能です。

 介護もEPAも絶対数が少なく、技能実習は人手不足解消策には使えません。そうすると、人手不足に悩む事業者の期待が特定技能に集まることになります。

試験実施状況

技能評価試験

  受験者数 合格者数
2019年4月 113 94
2019年5月 336 140
2019年6月 196 75
2019年7月 206 82
2019年8月 254 106

試験地はいずれもフィリピン

日本語試験

  受験者数 合格者数
2019年4月 113 97
2019年5月 336 121
2019年6月 202 49
2019年7月 200 91
2019年8月 279 147

試験地はいずれもフィリピン

 技能評価試験、日本語試験とも2019年11月までにフィリピン、カンボジア、ネパール、モンゴルで順次実施が予定されています。

 制度開始後半年で約500人の有資格者が誕生したことになります。介護分野では向こう5年間で最大6万人の特定技能外国人を受け入れるとしています。

 6万人という数字は上限であって目標値ではないのですが、それにしても半年で500人というのは少ないと言わざるを得ません。人手不足解消という政策目標を達成するには制度の周知が絶対的に必要ですね。

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