特定技能

どうなる特定技能?導入7か月の現状と今後の見通し

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11月13日に9月末(特定技能制度導入6か月経過)時点での特定技能1号の在留者数が公表されました。この数字を踏まえて現状を確認するとともに今後の見通しをたててみたいと思います。

特定技能の在留資格で日本に滞在するためには下図の4つのルートがありますので、ルート別に整理することにいたします。

留学生等からの在留資格変更(国内試験組)

宿泊、外食はこのルート

すでに日本に入国している外国人が、技能試験および日本語試験に合格して在留資格を特定技能に変更するルートです。

技能実習2号を良好に修了すれば試験は免除されますが、特定技能の対象となっている業種のうち宿泊と外食については技能実習2号の対象外となっています。したがって、宿泊と外食については受験が不可避です。

また、海外での技能試験は介護を除いて実施されていません。

以上より、少なくとも当面は、宿泊と外食については日本国内にいる留学生等が試験を受験・合格して在留資格を特定技能に変更するというこの方法をとることになります。

試験実施状況

外食

試験地 試験回 受験者数 合格者数
日本 1 460 347
2 1364 984
3 370 215
合計 2194 1546

これまでに1546名の合格者が出ています。

回を追うごとに合格率が低下しているのが気になります(75.4%→72.1%→58.1%)。

宿泊

試験地 試験回 受験者数 合格者数
日本 391 280

在留状況

9月末時点で外食分野20名、宿泊分野6名の在留が認められています。試験合格者数と比較するとずいぶん少ない印象です。

また、介護分野で16名の在留が認められています。この16名はフィリピンで実施された試験に合格された方々ではなく、特定活動(EPA介護福祉士候補者)からの在留資格変更によるものです。

EPA介護福祉士候補者は日本で介護の仕事に就きながら介護福祉士の資格取得をめざす制度です。介護福祉士試験に合格すれば介護士として就労を継続できますが、不合格になった場合は基本的には帰国しなければなりませんでした。

今般の制度改正に伴い、EPA介護福祉士候補者として4年間の在留期間を満了した者にも、介護福祉士試験で一定の成績を上げていたことを条件に特定技能の技能評価試験が免除されることになっています。この16名の方はこのルートで特定技能の在留資格が認められたものと推定されます。

また、自動車整備分野で1名在留が認められています。自動車分野の技能評価試験はまだ実施されていませんが、整備士の検定試験に合格して特定技能への在留資格変更が認められたというイレギュラーなケースです。

今後の見通し

ビルクリーニング

ビルクリーニング技能試験は、11月から12月にかけて日本国内8会場(定員700人)で実施されます。

試験会場定員分の出願があり、試験合格率が7割程度と仮定すると、500人程度の採用候補者が誕生すると予想されます。

飲食料品製造業

飲食料製造業技能試験は、10月に日本国内9会場(定員1010人)、年明け2月には日本国内6会場(定員1400人)で実施されます。

出願と合格率が他の分野と同程度であると仮定すると、1500人程度の採用候補者が誕生すると予想されます。

審査は長期化

技能評価試験合格者は着実に増えていますが、在留資格の許可件数の伸びは鈍いです。

8月31日時点での許可件数は86件、10月31日時点での許可件数は380件ですから、2か月間で294件の許可があったということがわかります。受理件数は1206件と聞いておりますので、現在申請中の案件を処理するだけで半年ほど計算になります。

(もちろん1206件の中にはすでに不許可となったもの、申請が取り下げられたものもあるはずです。その件数が公表されていないため正確な推計はできません。)

ただ、許可件数が月150件程度のペースでしか増えていないのは事実ですので、技能評価試験に合格してもすぐに在留資格変更が許可されることはあまり期待しないほうがよいでしょう。

新規での在留資格認定(国外試験組)

特定技能の在留資格で就労しようとする外国人が、技能試験および日本語能力試験に合格して在留資格の認定を受けるという、いわば特定技能制度の原則的なルートです。

試験実施状況

介護

試験地 試験回 受験者数 合格者数
フィリピン 1 113 94
2 336 140
3 196 75
4 209 82
5 254 106
合計 1,108 497

在留資格認定状況

国外試験組で在留が認められている外国人はまだいらっしゃいません。

10月31日時点で在留資格認定証明書は411件交付されていますが、この中にフィリピンでの試験合格者が含まれているかどうかは分かりません。

今後の見通し

介護

10月、11月にかけて、フィリピンのほかカンボジア、ミャンマー、ネパール、モンゴルで試験実施が予定されています。志願者がどれほどいるかは不明ですが、これまでの試験と同程度だとすると今年度の技能試験合格者は1000人から2000人程度に収まりそうです。

製造業

経済産業省の説明資料(「製造業における特定技能外国人の受入れについて」2019年8月)によりますと、ベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、タイの5か国で試験実施を計画しているそうです。

実施時期は「2019年度内」なので、今年度中に合格者が誕生するのかすら確実ではありません。合格後の入国手続に数か月を要することを考えると今年度中の就労開始は望み薄です。

農業

農林水産省のホームページに、「2019年度に試験実施予定のフィリピン、カンボジア、ミャンマー、ベトナム、インドネシア、中国、タイの7カ国において、試験実施環境が整った国から掲載いたします。」との記載があります。

9月13日時点の情報として、試験地フィリピン、試験実施時期2019年10月下旬~2020年3月中旬とあります。逆に言えば、他の6か国についてはこのような幅のある情報すら表に出せないという状況です。

農業分野の国外試験組が来日するのは来年度のことになるでしょう。

建設

国土交通省のホームページに「2019年度中にフィリピン・ベトナムで実施する予定」とあるだけです。

建設については技能実習もありますし、外国人建設就労者受入事業(特定活動35号)という元技能実習生の就労を可能にする制度も時限的にではありますが存在するので、特定技能への移行を急いでいないものと推測します。

自動車整備

「自動車整備業における外国人材の受入れについて」(2019年4月12日更新)という資料に、「2019年度中の実施(フィリピン、ベトナム)を予定していますが開催国等変更になる可能性がございます。」とあるだけで新しい情報はありません。

造船・舶用工業

11月28日にフィリピンで試験が実施されます。ただし、定員はわずか20名です。

航空

10月26日にモンゴルで航空機整備技能評価試験が実施されました。定員は60名です。受験者数、合格者数は未公表です。

また、11月23日にフィリピンでグランドハンドリングの技能評価試験が実施されます。定員は50名です。

漁業

水産庁「新たな外国人材受入れ制度に係る制度説明会」(平成31年3月)に「実施回数:主に国外で最大6回程度、開始時期:31 年度内予定」とあります。それ以上の新しい情報はありません。

外食、飲食料品製造

フィリピンでは外食分野および飲食料品製造分野の技能評価試験が11月から「随時」実施されるようになりました。試験日が多く設定されているうえ、3営業日前までに受験申込をすればよいという柔軟さなので今後合格者が増加すると予想されます。

まとめ

介護以外は今年度中に辛うじて1回試験を実施できるかどうかという状況です。合格者が出たとしても在留資格認定証明書交付手続など入国準備に時間がかかりますので、今年度中に入国できる特定技能外国人はいないか、いても少数にとどまるでしょう。

技能実習から在留資格を変更するパターン(スライド組)

技能実習2号または3号を修了した外国人が帰国せずに在留資格を特定技能に変更するパターンです。

在留資格変更許可件数

特定技能への変更許可件数 特定活動への変更許可件数
2019年6月7日時点 2件(申請100件) 223件
2019年6月30日時点 20件
2019年8月31日時点 86件 684件
2019年10月31日時点 380件 781件

*8月31日時点以降の変更許可件数には、留学やEPA介護福祉士候補者から特定技能への変更許可件数と技能実習からの変更許可件数が混在している可能性があります。

*「特定活動」は9月30日までに在留期限が到来する技能実習生のうち、特定技能への在留資格変更を希望しているものの登録支援機関等の準備が整わないために在留資格変更許可申請ができない外国人に特例的に対処する「つなぎ」の在留資格です。したがって、いずれは特定活動から特定技能への変更が行われることになります。

今後の見通し

3年前に特定技能の特定産業分野に該当する職種で技能実習を開始した外国人は約1万4千人いらっしゃいます。したがって、毎月1000人程度の特定技能移行候補者が誕生しているはずです。

しかし、特定技能制度導入7か月あまりを経過した現時点において、特定技能への変更許可申請が特定活動への変更許可を含めても2000件に届きません。

3年間楽しみにしていた帰国の予定を変更してまで特定技能にただちに移行しようという気は起きないのかもしれませんし、受入企業にも特定技能への移行に特段のメリットはありません。

監理費を負担に感じている企業が登録支援機関を利用せずに生活支援をして特定技能へ乗り換えるのであれば多少の費用節減にはなるかもしれませんが、せいぜいその程度です。

技能実習制度を大幅に縮小あるいは廃止するという政策がとられないのであればスライド組が急増することはないのかもしれません。

元技能実習生が特定技能の在留資格で来日するパターン(カムバック組)

9月30日時点で日本に在留する特定技能外国人の数は219人、そのうち技能実習ルートは176人です。176人の中にはスライド組が含まれていますので、カムバック組は数十人と推測されます。

10月31日時点での在留資格認定証明書交付件数も411件にとどまっており、カムバック組が急増する気配はありません。

技能実習をする際に提出した経歴と特定技能の申請をする際に提出する経歴に齟齬があったり、技能実習先以外の会社に就職しようとする場合に評価調書の取得に苦労したりと問題のない申請書類を提出することがなかなかに難しいのが主な理由と考えられます。

登録支援機関

11月14日時点で3057件の登録があります。約5割が株式会社、約3割が技能実習監理団体、残りが士業(行政書士、社労士など)です。

33万人いる技能実習生の受入を扱っている技能実習監理団体は、一般と特定を合わせてちょうど2700件です。

監理団体の数と比べても登録支援機関の数はすでに多すぎるのではないでしょうか。

「登録」は「お墨付き」とは違います

登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託した場合には、1号特定技能外国人支援計画の適正な実施に係る基準に適合するものとみなされます(入管法2条の5第5項、運用要領83ページ)。

では、登録支援機関に任せてしまえば安心なのかというとそうではありませんので注意が必要です。

特定技能所属機関が1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託した場合でも,当該登録支援機関の体制からして実効性ある支援を行うことができないと認められるときは,1号特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保の基準(特定技能基準省令第4条第1号の規定)により受入れが認められない場合があります。

法務省「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」3ページ

登録支援機関であればどこでもいいわけではなく、受け入れようとする外国人の人数、理解できる言語、従事する業務などに照らして十分な支援が期待できるかどうか、委託する側で判断しないといけないというわけです。

まとめ

現状

技能評価試験の受験者はそれなりに増えていきそうですが、見切り発車して8か月目に入っても体制が整っていない、というのが2019年11月の現状です。

出稼ぎ留学生は減りそう

アルバイト目的で来日する外国人が「留学ビザ」を利用するのは他に適当な在留資格がないからでもあります。特定技能という出稼ぎ目的の滞在を正面から認めた在留資格が新設されましたので、今後は特定技能制度を利用すればよいということになりました。

留学生に対する上陸審査・在留管理の厳格化ともあいまって「出稼ぎ留学生」「偽装留学生」は減っていくでしょう。

技能実習制度は残りそう

特定技能制度が国会で審議された際にさんざん技能実習制度の問題点がやり玉にあげられました。「技術移転による国際協力」とは建前にすぎず、大半の外国人は(企業も)出稼ぎ目的で技能実習制度を利用しているのだから、出稼ぎを正面から認める特定技能制度によって技能実習制度は上書きされるのではないか、という見立てもあったかと思います。

しかし、国外での技能評価試験が実施されないなど、送出し・受入れの体制が整わないのでは、外国人が技能実習ではなく特定技能を選ぶことはできません。

このままでは特定技能は「技能実習を5年間延長する制度」という位置づけになってしまうのではないでしょうか。

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