雑感

特定技能許可件数が「政府の見込みを大幅に下回っている」件

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マスコミの報道

特定技能制度導入半年となったところで、特定技能の低調ぶりが相次いで報道されています。

外国人材「特定技能」取得271人・・・受け入れ拡大半年 最大見込の0.5%

読売新聞2019年9月27日

5年間で最大約35万人を受け入れる政府試算に対し、現状の認定人数はベトナムなどからの400人弱にとどまる。

日経新聞2019年10月3日

などです。

「34万5千人」の意味

特定技能は見切り発車をした制度ですし、入管行政において「適正な審査」は譲れないものです。なので許可件数が伸びていないのは当然のことともいえます。

それはさておき、「政府の見込みを大幅に下回っている」という表現はおかしいと思います。

そもそも、「34万5千人」は「上限」であって、「見込み」ではありませんので。

特定技能外国人受入上限の34万5千という数字は、「向こう5年間で不足すると見込まれる労働者数」から「生産性向上等によりカバーできる人数」を減じて算出されたものです。

例えば、「建設分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」には

向こう5年間で 21 万人程度の人手不足が見込まれる中、今般の受入れは、毎年1%程度(5年間で 16 万人程度)の生産性向上及び追加的な国内人材の確保(5年間で1万人~2万人程度)を行ってもなお不足すると見込まれる数を上限として受け入れる

とあります。つまり、「向こう5年間で21万人の人手不足が見込まれているがそのうちの16万人分を生産性向上等でなんとかするにしても、5万人分はどうにもならないからを特定技能で補う。」と言っているのです。

同様の文書が各所管庁ごとに作成されていまして、それぞれ算出した「外国人に頼らざるを得ない労働人口の不足」を積み上げた数字が34万5千なのです。

特定技能では人手不足は解消しない

ギリギリでいいのか?

特定技能制度が設定している受入れ外国人の上限は、業務の自動化・省力化を進めるなどにより労働力需要を減らすことに成功し、子育て世代の就労を促進するなどにより労働力供給を増やすことにも成功し、それでもなお不足する人数です。

ということは、上限人数の外国人を受け入れてもギリギリの状態になるだけで余裕は生じないのです。ギリギリの状態になることをもって人手不足問題が解消したと言えるのでしょうか?

「枠の融通」もできません

また、34万5千人は受入分野全体の総計です。枠が不足する分野が枠に余裕のある分野から余剰枠を融通してもらうことはできません。

例えば、最大6万人受け入れるとしている介護分野に5万人しか集まらない、他方で最大5万3千人受け入れるとしている外食分野に6万人応募者がいる、という状態になったとしても外食分野は介護分野の「空き枠」を譲ってもらうということはできないので5万3千人で打ち止めです。

すべての分野で上限いっぱいの外国人を集めるのは難しいでしょうから、すべての分野で人手不足が解消することも期待しにくいと思います。

未達でも構わない

しつこいようですが、34万5千人は「受入れの上限」です。目標でも目安でもありません。したがって、受入人数を34万5千人に近づけようとする機運は生じません。人手不足に悩む事業主は期待していますが。

特定技能制度によって日本の労働力不足を補うという政策目標を掲げるなら、「上限」ではなく「目標」にしなければならなかったのではないでしょうか?

もともとの指示は「人手不足解消のための入管法改正を検討せよ」のはずですが、いろいろ懸念点が挙げられて話が「何人入国させれば人手不足を解消できるか」から「受け入れて問題ないのは何人までか」に変わってしまったのでしょう。

部員が8人しかいない野球部

部員が8人しかいない野球部があります。しかも、部員の1人はケガをしています。次の大会に出場したいのだけれども部員が2人足りません。

ケガをしている部員については復帰してくれるものと仮定して、それでも足りない1人について、陸上部やバスケ部に声をかけて助っ人を頼むことにしました。

ただし、お願いする助っ人は1人だけで、2人目の申出はお断りするつもりです。

「過度に助っ人に頼っては自分たちで工夫する努力を怠ることにつながるんじゃないか」とか「助っ人だらけになっては元からいる野球部員の出場機会が奪われるかもしれない」という意見に配慮したからです。

実に奇妙ですが、それに等しいことをしているのです。

見直しは2年後

「特定技能の在留資格に係る制度の運用に係る基本方針について」(平成30年12月25日閣議決定)の3ページ目には、

本基本方針については、出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律の施行後2年を目途として検討を加え、必要があると認めるときは見直しを行う。

とあります。2021年3月まではこのままいくということです。

 

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