外国人にも国民年金加入義務
「国民」とは書いてありますが国民年金に国籍要件はありません。外国人であっても日本に住んでいる以上は国民年金に加入する義務があるということになります。
老齢基礎年金の受給資格は、資格期間(保険料を納付した期間、免除された期間等を合算した期間)が10年に達すると与えられます。ということは、数年しか日本に滞在しない外国人は老齢基礎年金を受給できないのですが、だからと言って加入しなくてよいということにはなっていません。
掛け捨て防止の脱退一時金
老齢基礎年金は受給資格がなく、病気やケガもしなかったので障害基礎年金を受け取ることもなかった、ただ保険料を納めただけだったという外国人を救済する制度として脱退一時金があります。
脱退一時金の請求要件
脱退一時金は次の条件をすべて満たすことにより請求できます。
- 日本国籍を有していないこと
- 被保険者期間が6か月以上あること
- 日本に住所を有していないこと
- 年金の受給権を有したことがないこと
日本に住所を有していないことが条件になっているので、転出届提出後でないと請求できません。
脱退一時金の請求方法
脱退一時金は、脱退一時金請求書に次の確認書類を添付して提出することで請求できます。
添付書類
- パスポートのコピー
- 住民票の除票の写しなど日本に住所がなくなったことがわかるもの
- 銀行口座番号とその銀行口座が請求人のものであることの証明書
- 基礎年金番号が確認できるもの(年金手帳など)
詳しくは日本年金機構のホームページをご参照ください。
注意事項
年金加入期間から除外される
脱退一時金の計算の基礎となった期間は年金加入期間から除外されます。
脱退一時金請求後、再度来日することがなければよいのですが、そうでない場合、脱退一時金を受け取ったために、年金受給資格が得られなくなったり、受給額が少なくなる可能性があります。
社会保障協定締結国間年金通算期間からも除外されます。
日本は、中国、フィリピンなど22か国との間で社会保障協定を締結しています。社会保障協定は保険料の二重負担を防ぎ、加入期間を通算することを目的とするものです。
社会保障協定相手国から来日している外国人が日本にいる期間中に保険料を納めた期間は、本国で加入している社会保険と通算されますので、保険料は無駄にはなりません。
しかし、脱退一時金を請求すると、その計算の基礎となった期間は通算の対象外となってしまいます。
年金制度は各国でそれぞれ異なるので一概には言えないかもしれませんが、「脱退一時金を請求しない方がよかった」ということにならないよう慎重に判断する必要があります。
脱退一時金の上限は36か月分
脱退一時金の上限は36か月分です。例えば4年間日本に在留して保険料を48か月分納めたとしても受け取れる脱退一時金は36か月分だけです。そして、保険料納付済期間から除外されるのは脱退一時金計算期間の全部である48か月です。つまり12か月分は納め損ということになります。
1号技能実習(1年間)と2号技能実習(2年間)の合計3年間日本に在留して、一時帰国中に36か月分の脱退一時金を受け取り、それから3号技能実習で2年間在留して24か月分の脱退一時金を受け取る場合は問題ありません。
しかし、3号技能実習開始後に一時帰国をする場合や、2号技能実習修了後帰国せずそのまま特定技能に在留資格を変更する場合には「納め損」が生じてしまいます。
36か月という上限をもっと伸ばすよう法改正があればよいのですが、今のところそのような話は出ていませんのでこの点にも注意が必要です。