在留資格取消し件数の推移
令和元年8月21日付で平成30年の在留資格取消し件数が発表されています。
前年比倍増です。在留資格別にみますと「留学」が最も多く412件です。これだけで前年の件数を上回ってしまいます。次いで「技能実習」153件、さらに「日本人の配偶者等」83件と続きます。
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri10_00057.html
年度 | 在留資格取消し件数 |
平成28年 | 294件 |
平成29年 | 385件 |
平成30年 | 832件 |
在留資格取消し事由にはどのようなものがあるか
入管法第22条の4第1項には次のように在留資格取消し事由が掲げられています。
偽りその他不正の手段により上陸許可を受けたこと
入管法第5条第1項各号に掲げられた上陸拒否事由(感染症の所見があるなど)に該当するのに該当していないように見せかけたことが発覚した場合などです。
在留資格に応じた活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること
入管法別表第一の各在留資格は、在留資格ごとに本邦で行うことのできる活動が定められています。認められていない活動をおこなってはいけないということです。
日本語を勉強するため「留学」の在留資格を与えられているのに、実際には勉強をせず、会社勤めをしている場合などが該当します。
ただし、正当な理由がある場合は除かれます。
在留資格に応じた活動を継続して3か月間以上行わないで在留していること
認められている活動を実際に行うことが期待されているということです。
こちらも正当な理由がある場合は除かれます。
日本人の配偶者、永住者の配偶者の在留資格をもって在留する者が、その配偶者を有する者としての活動を継続して6か月以上行わないで在留していること
離婚してしまった場合などがこれにあたります。
日本人と離婚したものの子供の養育等を理由に在留を継続したい場合は「定住者」という在留資格へ変更することが認められる場合があります。
こちらも正当な理由がある場合は除かれます。
住居地の届出を怠った場合など
- 上陸許可の証印又は許可を受けた日から90日以内に住居地の届出をしないこと
- 中長期在留者が、法務大臣に届け出た住居地から退去した場合において、退去の日から90日以内に新住居地の届出をしないこと
- 中長期在留者が、虚偽の住居地を届け出たこと
外国人の所在を正確に把握しようとする入管行政が見て取れます。
在留資格取消しが増えたのはなぜか
一つは、取消し事由に該当するケースそのものが増えたことが考えられます。典型例は出稼ぎ目的の留学です。
技能実習生の在留資格取消しは、実習先から失踪したケースや実習先の倒産や不正発覚で実習を継続できなくなったケースが該当します。技能実習生の増加に伴い失踪件数も増加していることを反映しているといえるでしょう。
今後は出入国在留管理庁の職員増強も予定されていることから、取り締まり強化が予想されます。入管法違反件数に対する違反発覚の割合が高くなり、結果として在留資格取消し事案も増えていくものと予想されます。