特定技能

登録支援機関は必要か?

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 特定技能制度の大きな特徴は、特定技能外国人の職業生活上、日常生活上、社会生活上の支援計画を作成することが受入企業の義務とされていることです。

 支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託した場合、当該企業は支援計画の適正な実施の確保の基準に適合するものとみなされますが(入管法第2条の5第5項)、当然コストがかかります(相場は一人月額2万円くらいでしょうか)。

 登録支援機関に委託をするべきかどうか検討の助けとなるよう、まずは支援計画の内容を確認してみたいと思います。

支援計画の内容

1 事前ガイダンスの実施(3時間程度)

 受入企業は、雇用契約締結後入国手続前に次の情報提供等を目的とする事前ガイダンスを実施しなければなりません。

  • 労働条件に関する情報提供
  • 業務内容に関する情報提供
  • 入国手続に関する情報提供
  • 保証金の支払や違約金等に関する契約を締結していないことの確認
  • 外国の取次機関に費用を支払っている場合はその額と内訳を十分理解していることの確認

 など

2 出入国する際の送迎

 受入企業は、特定技能外国人に対して空港から受入企業の事業所(または住居)の間の送迎をしなければなりません。

3 生活に必要な契約に係る支援

 受入企業は、住居を提供する、あるいは賃貸借契約の連帯保証人になるなどして住居の確保を支援しなければなりません。

 また、銀行口座の開設、携帯電話の利用に関する契約の補助を行うことも求められています。

4 生活オリエンテーションの実施(8時間以上)

 受入企業は、特定技能外国人が入国した後遅滞なく、生活オリエンテーションを実施しなければなりません。生活オリエンテーションの内容は次の通りで非常に多岐にわたっています。

  • 金融機関の利用方法
  • 医療機関の利用方法
  • 交通ルール
  • 交通機関の利用方法
  • 生活ルール・マナー
  • 生活必需品等の購入方法等
  • 災害情報の入手方法等
  • 我が国で違法となる行為
  • 国又は地方公共団体の機関に対する届出等
  • 住居地に関する届出
  • 社会保障及び税に関する手続
  • 相談又は苦情の窓口
  • 当該外国人が十分に理解することができる言語により医療を受けることができる医療機関に関する事項
  • 防災及び防犯に関する事項
  • 急病その他の緊急時における対応に必要な事項
  • 入管法、労働法違反を知った時の対応方法

行政手続等については情報提供だけではなく窓口へ同行し書類作成の補助をするなどの必要な支援をすることも求められています。

5 日本語学習の機会の提供

  • 日本語教室の案内
  • 教材、オンライン講座の情報提供
  • 受入企業が日本語講師と契約して実施する日本語講習 など

 当該外国人の日本語能力のレベル等を勘案してどのような支援をすべきか決定するということでしょう。

6 相談又は苦情への対応

 受入企業は、特定技能外国人から相談又は苦情の申出を受けたときは、遅滞なく適切に応じるとともに、相談等の内容に応じて必要な助言、指導を行う必要があります。

 相談・苦情の対応は、平日のうち3日以上、土曜・日曜のうち1日以上対応し、相談しやすい就業時間外などにも対応できることが求められています。

7 日本人との交流促進に係る支援

 地方公共団体やボランティア団体等が主催する地域住民との交流の場に関する情報提供や地域の自治会等の案内を行い、各行事等への参加の手続の補助を行わなければなりません。

 また、必要に応じて特定技能外国人に同行して各行事の注意事項や実施方法を説明するなどの補助を行わなければなりません。

8 再就職支援

 受入企業が倒産するなど、外国人の責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合には、転職を支援しなければなりません。

9 定期的な面談の実施、行政機関への通報

 当該外国人及びその監督をする立場にある者と定期的(3か月に1回以上)な面談を実施し、労働状況や生活状況を確認しなければなりません。

 面談実施者が労働法違反の事実等を知ったときはこれを関係行政機関に通知する必要もあります。

登録支援機関を利用すべきか

 結論から言えば、必ずしも登録支援機関に委託する必要はないように思います。確かに、委託が望ましい側面もありますが委託先、委託内容、委託料は納得のいくようよく検討しましょう。

入国時の支援⇒自前で実施または定額制で委託

 支援計画の内容は、入国時の支援と入国後の支援に大別されます。このうち入国時の支援は自前で(自社で)行う、登録支援機関に委託するにしても受入れ人数に関わらず定額で依頼できるところに委託すべきと考えます。

事前オリエンテーション

 事前に要するに雇用契約の確認です。これを外部の業者にお願いするというのはそもそもスジが違うのではないでしょうか?

出入国する際の送迎

 送迎に専門的知識は不要です。また、迎えにいくのは礼儀ではないでしょうか?

生活に必要な契約にかかる支援

 確かに、役所や銀行まわりは面倒です。業者に頼んで手間を省くというのもありかもしれません。

生活オリエンテーションの実施

 法律、社会保障、税の説明などですから専門家に頼んだ方が誤解を避けるよろしいでしょう。

 ただし、5人に話すのも10人に話すのも手間としては大差ないはずです。人数に比例する従量制ではなく、一回いくらという定額料金でお願いするのがいいでしょう。

入国後の支援⇒経験豊富な機関に委託すべき

日本語学習機会の提供

 雇用する外国人がどの程度の日本語の能力を備えているかによって内容が大きく変わりますが、専門家の手を借りた方がいい場合も多いでしょう。

相談又は苦情への対応

 登録支援機関に中立的立場にある第三者として問題の解決に当たってもらった方がよろしいかと思います。

日本人との交流促進に係る支援

 社外コミュニティとの交流を想定していますので、第三者の協力を仰ぐのがいいでしょう。

再就職支援

 受入企業が倒産などの状況にあることが前提となっています。このような状況では自社対応は難しいでしょう。

定期的な面談の実施

 外国人だけではなく、その上司も面談の対象です。大企業であれば本社の人事部が外国人が働く現場に赴いて面談するということも考えられます。しかし、中小企業ではそもそも面談適任者が見つからないということもあり得ます。外国人相談の経験・実績が豊富な第三者に委託するのがよいでしょう。

 また、違法事由が発見された場合、面談者は行政機関等に通報することが義務付けられています。社内の面談者による通報は期待できませんから、面談は社外の者が行うことが原則的な方式として想定されているとすらいえます。

結論

 入国時の支援は自社で対応可能または対応すべき内容が多いので登録支援機関に委託する必要は必ずしもないように思います。

 それに対して入国後の支援は第三者的立場にある者、専門的知識のある者による支援が望ましいと思います。

 ただ、約2000ある登録支援機関の中からどの機関を選ぶかはまた一つの大問題です。登録支援機関の中身・実力は様々だからです。大企業もありますし個人で登録している方もいらっしゃいます。一定の要件を満たしているから登録が許されているのですが、必要な支援の量と質はケースバイケースで、すべての登録支援機関がすべての支援計画実施に必要な能力を備えていることは保障の限りではありません。

 現に、2019年3月に法務省が作成した「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」には

特定技能所属機関が1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託した場合でも、当該登録支援機関の体制からして実効性ある支援をおこなうことができないと認められるときは、1号特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保の基準により受入れが認められない場合があります。

と明記されています。御社が受け入れようとする外国人に対して具体的に必要とされる支援を実施できるのか、それに対する委託費は適切か、検討が必要になります。

 いかんせん導入されて日の浅い制度ですので登録支援機関自体の実績はどの機関もほぼありません。設立母体の事業内容・実績や当該機関と御社の取引実績などから判断するしかありません。

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