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特定技能

どうなる「特定技能」導入4ヶ月の現状

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特定技能の在留資格取得者は96人

  2019年4月に新しい在留資格、「特定技能」が設けられてから4か月が経ちました。この4か月間で特定技能の在留資格が認められたのは96人にとどまっています。96人のうち69人は元実習生、27人は技能実習生や留学生の在留資格変更です。

 導入前の報道からは、5年間で最大34万人、外国人労働者が日本に大挙して押し寄せる!という印象を受けた方も多かったのではと思いますが現状はそのような状況にありません。

 受入れは低調なまま終わるのか、それとも加速するのか、見通しを立てるために現状の分析をしてみたいと思います。

特定技能4つのパターン

 その外国人の滞在場所(外国にいるのか、すでに日本に入国しているのか)と、在留資格の取得方法(試験に合格するのか、技能実習を修了するのか)の組合せにより、特定技能の在留資格を得るパターンは4つに分類できます。

 

試験突破組は「試験待ち」

 フィリピン、ベトナム等で実施される技能評価試験と日本語評価試験に合格すると特定技能の在留資格を得ることができます。しかし、介護を除いて海外での試験は実施されていません。

すでにマニラにおいて実施された介護の試験結果は次の通りです。

試験実施月

介護技能評価試験

合格者数

介護日本語評価試験

合格者数

4月 94人 97人
5月 140人 121人
6月 75人 49人
7月 82人 91人

 介護の受入れ上限人数は向こう5年間で6万人となっています。単純に割り算をすると毎月1000人ですから、上限の10分の1のペースです。

 また、合格率が4月の試験だけ74.3%と高かったのですが、他は40%程度と低くなっています。外国人にとってはなかなかハードルが高いようです。

 介護以外の業種の技能評価試験は秋以降、あるいは年明けに予定されていますが、どの程度の受験者が集まるでしょうか。介護の試験の受験状況をみると数千、数万の受験者がいるとは想像しにくいところです。

留学生就職組は卒業待ち(?)

 特定技能の在留資格は、すでに留学等の在留資格で日本に在留している外国人が技能評価試験および日本語評価試験に合格することでも得られます。

 外食の技能評価試験は4月と6月に日本国内で実施されており、それぞれ347人、984人の合格者が出ています。同様に宿泊の技能評価試験も4月に実施されており280人が合格しています。

 1500人以上の合格者がいるのに、在留資格を特定技能に変更した外国人が27人しかいないということはどういうわけでしょうか?

  1. 技能評価試験には合格したが日本語評価試験は不合格だった
  2. まだ受入企業(内定先)が見つからない
  3. 在留資格変更許可を申請したがまだ許可がおりていない
  4. 卒業までまだ時間があるので在留資格変更許可申請をまだしていない
  5. そもそも本気で特定技能に変更するつもりはない

などが考えられます。

 外食も宿泊も人手不足が著しく、引く手あまたでしょうから2はあまりないのではないでしょうか。そうしますと、3か4か、第1回の外食技能評価試験で欠席者が多かったことからすると案外5なのかもしれません。

 ちなみに、ベトナムとの協力覚書には、少なくとも2年間の過程を修了してその証書を取得する学校を修了した場合しか特定技能への変更は認めませんよ、また、就労目的での留学を防止するようにしましょう、と釘がさしてあります。

カムバック組には「運用の壁」

協力覚書が提携されていない

 日本政府は、特定技能外国人の円滑かつ適正な送出し・受入れの確保等のために、送出国との間で、協力覚書を作成しています。協力覚書の中で特定技能外国人受け入れのルールが定められます。

 例えば、モンゴルからの特定技能外国人は、必ずGOLWS(労働・社会保障サービス総合事務所)を通さなければならないと決められています。モンゴルに技能実習生を送り出している機関はいろいろありますがそれら経由ではダメだ、ということです。

 したがって、協力覚書が締結されていないということは特定技能外国人招聘のルールが確立されていないということになり、事実上特定技能外国人招聘できないのです。

 長年技能実習生最大の送出し国であった中国とは本日(8月10日)現在協力覚書が締結されていません。したがって、中国人の元実習生を特定技能で呼び戻すことはできないのです。

 また、現在最大の送出し国となっているベトナムとは7月1日に協力覚書を締結したものの、ベトナム政府が許可をした送出し機関からのみ受け入れるとしており、この許可はまだなされていません。したがって、ベトナムから呼び戻すこともできません。

評価調書の壁

 カムバック組が技能評価試験の受験を免除されるのは、「技能実習2号を良好に修了した場合」です。技能実習修了時に技能検定3級を受検・合格していればよいのですが、受検していないケースもかなりあります。

 このような場合に「技能実習2号を良好に修了した」ことを証明するために必要なのが評価調書です。この評価調書をご覧いただくとわかるのですが、なかなか大変です。

 2年間の出勤日数、欠勤日数に加え、技能実習指導員、生活指導員、技能実習責任者の所見、さらには監理責任者の所見まで書いてもらわないとなりません。これを作成するのは特定技能外国人の受入れとは関係があるとは限りません。したがって、入手するのに思いのほか苦労することがあります。

移行組が一番ハードルが低い

  特定技能の職種と技能実習の職種の間にズレがあるので、技能実習2号を良好に修了したからといって必ずしも特定技能に移行できるわけではありません。例えば縫製は特定技能の14職種に含まれていないので、縫製で技能実習を修了しても特定技能に移行することはできません。

  特定14職種に含まれている場合は、技能実習修了者が希望し、受け入れ企業のニーズさえあればスムーズに移行できるのではないかと思われます。技能実習2号の外国人は約17万6千人いますから、毎月数百人の移行があってもおかしくないはずです。

  高いハードルがないにもかかわらず特定技能への移行が進まないということは、特定技能の制度そのものの魅力がないということになるでしょう。私は、移行組の動向を特定技能の制度の人気のバロメーターとして注目しています。

  ただ、技能実習2号から3号へ移行する際には必ず一時帰国をしなければならないとされてきたので、実習生としても2号修了後、特定技能に移行する前に一旦帰国することを希望するケースはあるようですが。

建設には特有の事情も

 実は、技能実習生修了者が日本で就労可能となる在留資格は特定技能だけではありません。「外国人建設就労者受入事業」があるのです。これは東京オリンピック準備のための建設業における労働力不足を補うための暫定的な措置ではありますが、実習生、元実習生は2023年まで就労が可能となっています。

 この制度がありますので、建設分野では特定技能への移行を急ぐ必要なしと考える企業も多いのではないかと考えられます。

まとめ

  • 特定技能外国人の受け入れ状況は低調
  • その原因は、技能評価試験の実施や協力覚書締結などの受け入れ準備が進んでいないからと考えられる
  • 受け入れ体制が整っても受け入れが進まないということは特定技能の制度そのものに魅力がないからということ

  当面の要注目事項は中国との協力覚書締結、ベトナム政府による送り出し機関の許可です。これらが進まないことには受け入れも進まないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

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